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日本衛生広報誌

WATER+ vol.12

2022年4月発行/日本衛生広報誌「WATER+ vol.12」
●「法亀寺しだれ桜」今年は枝垂れ桜を見に道南の北斗市へ
●国によるアスベスト飛散防止対策が強化されました


 

「法亀寺しだれ桜」今年は枝垂れ桜を見に道南の北斗市へ

法亀寺しだれ桜

道内各地にある桜の名所。暖かくなるのが早い道南から間もなく開花の便りが届きます。同地域の主要都市である函館には「函館公園」と「五稜郭公園」が二大花見スポットとして多くの人で賑わいますが、近年はお隣の北斗市にある道内最大級と言われる枝垂れ桜も人気を集めています。北斗市は2006年、上磯町と大野町が合併して誕生しました。下北半島を見渡す「きじひき高原」、静寂な佇まいの男子修道院である「トラピスト修道院」、渓流の瀬音を聴きながら源泉に浸る「せせらぎ温泉」などの人気スポットがあります。
その北斗市の中央を南北に流れる大野川に架かる大野橋そばに、仏教寺院「金言山法亀寺」があります。1849(嘉永2)年に法亀庵として始まったとされ、その境内に推定樹齢300年、高さ約12メートルの「法亀寺しだれ桜」が例年、4月下旬から5月上旬にかけて美しい花を咲かせます。
全国には天然記念物の福島県三春の滝桜をはじめ、秋田県角館武家屋敷通り、栃木県関場などに枝垂れ桜の名所があります。道内にも道民によく知られた枝垂れ桜がありますが、同寺の枝垂れ桜ほど大きなものは見かけないと言われています。
品種は江戸彼岸(エドヒガン)。淡い紅色の小降りの花がついた枝が地面近くまで垂れ下がり、風に揺れる様は一幅の絵画。満開時期には夜間のライトアップも行われ、幽玄な美しさを誇ります。

 

大野川沿い 桜並木

北斗市にはこのほか、大野川沿いにソメイヨシノを中心にした約100本の桜が続く「大野川沿い桜並木」をはじめ、箱館港の開港にともない松前藩が構築した日本最初の洋式築城と言われる国指定史跡に約800メートルにわたり続く「松前藩戸切地陣屋跡地桜並木」、ドライバーの目を楽しませる桜のドライブコースとして人気の道道96号線沿いに約2キロも続く「清川千本桜」など、北斗桜回廊と名づけられた個性豊かな桜の名所が市内各所にあり、桜めぐりを楽しむことができます。
函館市はもちろん、時間が許せば松前町に足を伸ばすことも難しくない距離にあります。今年の春は道南で桜三昧がおすすめです。

 


 

国によるアスベスト飛散防止対策が強化されました

一定規模以上の解体、改修工事は例外なく事前調査の「結果報告」が義務化され、含有不明の建材は分析によりその有無を確認する必要があります。

国は大気汚染防止法の一部を改正する法律を2020年6月に公布し、アスベストの飛散を防止する対策を強化しています。その一環として2021年にレベル3を含むすべての建材を対象に、アスベスト含有の有無を確定する「事前調査」を定めました。
これに続き今回、2022年4月1日から解体や改修工事を行う事業者に対し、一定規模以上(解体床面積合計80㎡以上、請負金額税込100万円超)の工事は、アスベスト含有の有無に関わらず労働基準監督署と自治体に、事前調査の結果を「報告」することを義務化し、含有の有無を確認するための分析の実施を定めました。2023年には事前調査を行う者の資格要件の導入を予定しています。
日本衛生環境分析センターでは国が進める防止対策強化に即応し、アスベストに関わる調査や分析などをサポートするチームを発足させ、札幌をはじめ道内各地で活動を開始しています。

<大気汚染防止法改正の主な内容>

●規制対象建材の拡大

規制対象について、石綿含有成形板等を含む全ての石綿含有建材に拡大し、石綿含有仕上塗材の除去作業には、独自の作業基準が設けられる。また、作業基準を遵守しなければならない者及び作業基準適合命令等の対象となる者に、下請負人が加えられる。

●事前調査の信頼性の確保

元請業者に対し、一定規模以上等の建築物等の解体等工事について、石綿含有建材の有無にかかわらず、調査結果の都道府県等への報告が義務付けられる。また、事前調査の方法が法定化等される。

●直接罰の創設

隔離等をせずに吹付け石綿等の除去作業を行った者に対する直接罰が創設される。

●作業記録の作成・保存

元請業者に対して、石綿含有建材の除去等作業の結果の発注者への報告や作業に関する記録の作成・保存が義務付けられる。また、元請業者は下請負人に対する指導に努めることとされた。

完全防護スタイルで試料採取

事前調査は設計図などによる書面調査と、工事現場を実際に訪れて地下や天井裏などあらゆる場所に立ち入り、使用されている建材を実際に目で見て確認する現地調査を並行して実施します。部屋数や建物規模が大きいほど作業量は増加していくことになります。分析に必要な試料採取にはアスベストを自ら吸い込んでしまう危険性がつきまとうので、防護具などで体を完全にガードすることが必要になります。

分析試料の採取(※1)

測定には偏光顕微鏡を使用

現場から採取した試料の分析には、鉱物の同定に広く使用される「偏光顕微鏡」を用います。自然光を特殊なフィルターで1方向にだけ振動する光(偏光)に変え、試料に照射すると鉱物固有の光学的性質を観察することが可能になります。
試料によっては、アスベストと思われる繊維を視認できるものもあります。写真(※1)の天井の試料はその状態に近く、実体顕微鏡で試料を確認した後、繊維だけを慎重により分けて標本にします。壁の試料は繊維の視認が困難で、含有されていてもアスベストの量は少ないと思われるので、少量でも見逃さずに検出できるように、非アスベスト成分をあらかじめ取り除く試料調製を行います。
試料調製には加熱による灰化、希塩酸中で攪拌する酸処理、水の浮力を利用する浮遊沈降などの方法があり、試料の状態などによっては組み合わせて行うこともあります。こうして作成した標本を偏光顕微鏡で観察し、アスベストの同定を行います。
同定は形態、色、複屈折、消光特性、伸長の符号、分散色を観察しながら進めていきます。複屈折はアスベストが持つ光学的性質の1つで、光を当てると複数に屈折します。偏光顕微鏡を調整してその干渉色を観察できます。干渉色はアスベストの種類によって特有の色合いを示し、種類を推定する指標の1つになります。このように各項目を一つひとつ丹念に観察し、アスベストの含有の有無を判定します。

偏光顕微鏡で試料を分析

偏光顕微鏡で撮影したアスベスト

解体棟数は10年後をピークに40年先まで

そもそも繊維には天然繊維と化学繊維があります。天然繊維は植物、動物、鉱物に分かれ、アスベストは鉱物繊維になります。石のように固まった状態で採掘され、触れると綿状にほぐれます。日本ではクリソタイル、アモサイト、クロシドライトなど6種類をアスベストと定義しています。
アスベストは20世紀に入り、建物の断熱材や防火材をはじめ電気製品、家庭用品、自動車など、さまざまな産業分野の製品に大量に使用されました。しかし20世紀後半、人体や環境への有害性が指摘されるようになり社会問題化しました。
アスベストをほぐしていくと最後は、直径0・02マイクロメートルの微細な針状繊維になります。非常に軽く、空中に飛散し、吸い込むと肺細胞に達して突き刺さり、悪性中皮腫や肺がんなどを引き起こすことが、科学的に明らかとなりました。
日本では高度経済成長期をピークに過去50年間にわたり輸入、生産されたアスベストは約1000万トンに達し、そのうち約800万トンが建築材料に使用されたと環境省は推定しています。
アスベストを含む建材を使用した建物の解体や改修工事は、2030年をピークに2060年頃まで終わらないと言われています。作業者はもちろん住民の健康を守るために、飛散防止の対策強化はますます重要になっています。

アスベスト曝露と悪性胸膜中皮腫の発症

悪性胸膜中皮腫は、アスベストの曝露から20~50年と非常に長い潜伏期間を経て発症するのが特徴です。このため、かつてアスベストを扱う職業に就いていた方や、アスベストを扱う作業現場の近くに住んでいた方なども、発症する危険が高いことが知られています。

有資格者のサポートで、事前調査から分析までワンストップで対応

事前調査の結果は3年間の保存が義務付けられているほか、たとえアスベストを含有する建材が皆無だとしても、戸建て住宅を含め一定規模以上の工事は例外なく労働基準監督署と自治体に結果報告をしなければなりません。この点が今回の大きな改正ポイントになります。
一定規模以上の工事基準は、解体床面積の合計80平方メートル以上、請負金額が税込で100万円を超えるものと定められました。80平方メートルは24坪強。請負金額税込100万円は、戸建て住宅の改修工事でもすぐに達する数字です。事前調査の報告は事実上、ほぼすべての解体や改修工事で必要になると言えます。
ボイラーや配管設備、焼却設備、煙突、発電・変電設備、トンネルの天井板などの工作物や、船舶などの解体改造なども、一定以上の工事費やトン数のものは事前調査の報告が義務付けられました。
加えて、2023年10月には事前調査を行う者の資格要件の導入が予定されています。事前調査を行うことができる資格は4つあります。特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)、一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)、一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者)のほか、この法律が施行される直前の9月末までに日本アスベスト調査診断協会に登録されている者と定められています。
当社環境分析センターには事前調査に必要な一般調査者の資格をもった技術者が在籍しています。一般調査者は、ほぼすべての建築物の事前調査を行えますので、解体や改修工事に関することは的確・適切に対応することが可能です。

2021年7月発行/日本衛生広報誌「WATER+ vol.12」より

●WATER+ vol.12 PDF版(3.2MB)

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