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日本衛生広報誌

WATER+ vol.11

2021年7月発行/日本衛生広報誌「WATER+ vol.11」
●About COVID-19 新型コロナウイルスとは?
●COVID-19 私たちの日常を取り戻すために


 

About COVID-19 新型コロナウイルスとは?

コロナウイルスには多くの仲間がいます。その中の7つが人間に病気を引き起こします。7つのうち4つのコロナウイルスが、かぜや肺炎など呼吸疾患を引き起こします。その中の3つが重篤なダメージを人間に与える可能性があります。3つとは、2002年発生のSARSコロナウイル(重症急性呼吸器症候群)。2012年に発生したMERSコロナウイルス(中東呼吸器症候群)。そして2019年末、中国武漢で初めて特定された新型コロナウイルスです。

そもそもウイルスとは

単細胞生物の細菌よりもさらに小さく、タンパク質でできた殻(カプシド)の中に遺伝子を持つだけの単純な構造をした微粒子です。細胞を持たないウイルスは自己増殖する能力が無く、他の生物の細胞に侵入して増殖します。大量に増殖したウイルスは細胞膜を破って外に飛び出し、他の宿主にとりつき増殖します。これが感染です。

スパイクタンパク質とは

ウイルスの殻からトゲトゲ状の物質がいくつも突き出ています。これがスパイクタンパク質です。細胞に侵入する際に重要な働きをします。この働きを無効にすれば細胞に侵入できなくなります。ガードマンの役目を果たすのが免疫細胞でありワクチンです。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の形状は三角形で、従来のコロナウイルスと異なっていることが分かっています。この形状が感染力の強さの要因の1つ、と考える研究者もいます。

新型コロナウイルスの起源

中国の武漢にある生きたコウモリなどの動物を売買する生鮮市場との関連が示唆されています。世界保健機構(WHO)もコウモリを起源とし、中間動物を経由して人に感染したと発表しています。一方、バイデン米大統領は2021年5月、中国武漢にある研究所から流出したという仮説には説得力があり、さらに調査すべきだとの呼びかけを行っています。起源の特定はまだ時間がかかるのかも知れません。

キクガシラコウモリ

SARSやMERSとの違い

【SARSウイルス】

2002年、中国で初めて発見されました。米国やカナダを含む各国で感染が広がり、8000人以上の患者と800人を超える死者が出ました。ジャコウネコ科の哺乳類のハクビシンが感染源と推定されています。患者との濃厚接触、感染者のせきなどで飛散した飛沫を介して感染が広がります。2004年以降は症例報告がなく、病気としてのSARSは根絶したとみなされています。

【MERSウイルス】

2012年、ヨルダンとサウジアラビアで初めて検出されました。2018年時点での確定された患者数は2220人、そのうち約800人が死亡しています。2015年に韓国でも集団感染が発生し、180人以上の患者と35人近くの死亡が確認されています。MERSも患者との濃厚接触や、感染者のせきなどで飛散した飛沫を介して広がります。無症状者からの感染は起きないと言われています。

新型コロナウイルスの症状

症状は感染後2~14日後に現れ、発熱、せき、息切れ、呼吸困難、悪寒、疲労、筋肉痛、頭痛、喉の痛み、匂いや味を感じなくなる、吐き気、嘔吐、下痢など各種の症状を呈します。感染しても多くの人は無症状で、あっても軽い症状だけで済みます。しかし、加齢、喫煙、がん、心臓や肺などの疾患、糖尿病、肥満、免疫不全などの病気を持っている人は、重症化や死亡のリスクが高まります。

 

コロナウイルスワクチン

ワクチンには生ワクチン、不活化ワクチンなどの種類があります。生ワクチンは毒性を弱めた「生きた病原体」を接種します。不活化ワクチンは毒性を無くし「免疫を作るのに必要な成分」だけを取り出し、製剤にして接種します。ファイザー、モデルナ、アストロゼネカなどの製薬メーカーが製造するコロナワクチンは、遺伝子を利用してコロナウイルスのトゲトゲの部分だけを体内で作り、抗体免疫を高める新しいタイプの不活化ワクチンです。


 

COVID-19 私たちの日常を取り戻すために

新型コロナウイルスの消毒作業を適切・的確に実施しています。

私たち日本衛生株式会社は、有害生物に関する調査研究および防除技術に関する技術指導を行う公益社団法人「日本ペストコントロール協会」(本部・東京)のマニュアルを基本に、新型コロナウイルス感染者が確認された職場や施設などの消毒作業を、施設担当者と十分な打ち合わせのもと、適切・的確に消毒作業を行い、保健所など公的機関からも高い評価を得ております。1日も早いコロナ以前の「日常」を取り戻すことを願い、私たちが実施する作業の概略をご案内いたします。

感染者確認から消毒作業開始までの流れ

職場や施設などで新型コロナウイルス感染者が確認された場合、地域を管轄する保健所(札幌の場合は札幌保健所)は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づき、積極的疫学調査(接触者調査)の実施とともに、消毒勧告を出します。
勧告を受けた職場や施設は、みずからの責任において消毒を行わなければなりません。自力で消毒作業を行うことが困難な場合は、業者に代行させて実施することができます。
当社は1981年の創業以来、人の健康を損なう病原微生物を媒介する「ネズミなどの動物の防除」を義務付ける「建築物環境衛生管理基準」をクリアするペストコントロール(PCO)業務を高レベルで実施し、豊富な実績とノウハウを蓄積しております。
新型コロナウイルス感染症に関する消毒作業においても正確な知識、適切な除去方法、的確な薬剤使用はもちろん、風評被害を含むさまざまな可能性や事情を勘案しながら建物管理担当者と入念な打ち合わせを行い、職場や施設の感染状況に対応したきめ細かな個別の実施計画を立案した上で、他エリアへの感染拡大を封鎖しながら確実に感染を終息させる消毒作業を実施しております。
また、軽症者・無症状の陽性者向け宿泊施設の消毒や感染症患者の搬送用車両の消毒。さらには、運転手や救命士への消毒及び防護服の装着支援作業など幅広く対応しております。
次のページでは、当社が行う新型コロナウイルスに対する消毒作業の手順を具体的に説明いたします。

搬送用車両の消毒

 

消毒作業の手順概略

(1)汚染レベルのゾーニング

職場や施設などから感染者確認の連絡をいただくと、当社ペストコントロール事業部の担当者が速やかに訪問し、消毒作業の打ち合わせを行います。
建物管理担当者から建物内での感染者の位置や動きを聞き取り、ご用意いただいたフロア図面に感染者の動線を詳細に落とし込み、これに基づいて建物内をレッドゾーン(汚染区域)、イエローゾン(準清潔区域)、グリーンゾーン(清潔区域)に区分けし、使用する消毒液や機材の種類、量、作業時間、人員などを含めた具体的な作業計画を立案します。
並行して、建物管理担当者から考慮してほしい事項など各種ご要望を確認し、作業実施に対する共通認識を細部に至るまで詰め、建物管理担当者の納得と了解のもとで本格的な準備に取りかかります。

ゾーニングのイメージ

(2)作業ステーションの設置

作業当日、計画に基づき用意した消毒液や機材などを当社担当部署の作業員が現場に運び込みます。室内の照明を点灯後、換気扇やエアコンが停止していることを確認します。場合により、夏期など気温が高い日は作業員の体調管理を目的に、エアコンを事前に作動させて室温を下げる作業を併せて行うこともあります。
グリーンゾーンへの汚染を防止するため、消毒を開始するレッドゾーン入口に誰でも明瞭に認識できる「作業ステーションエリア」を設置します。防護服の着脱をこのエリアに限定するほか、廃棄物容器や作業員用の手指消毒剤などを準備し、消毒作業中の行動による汚染拡大を防ぐとともに、作業員以外の方々がエリアを超えてレッドゾーンに入り込むことを封じます。

(3)「清拭」による消毒作業

消毒作業は薬剤を浸した不織布による「清拭」によって行います。清拭とは本来、入浴できない人の体をきれいに拭き清める看護・介護の拭き方です。この方法を応用して感染者が触れた可能性のあるドアノブ、スイッチ、机、椅子、パソコン、家具などすべての場所を拭き上げます。
吹き上げ方法は、空間噴霧にならないよう注意しながらハンドスプレーヤーで、感染の可能性がある場所を濡れる程度に均一に散布し、不織布で常に一方方向に清拭します。状況によりバケツなどに十分な量の薬剤を投入し、不織布を浸して清拭します。
空間噴霧については世界保健機構(W H O)や米国疾病予防管理センター(CDC)が「室内、屋外とも人の健康に有害になり得る」として推奨しておらず、厚生労働省も同様のスタンスをとっており、当社もこれに準じた作業を行っています。
清拭に使用した不織布は作業後、ゴミ袋にウイルスを外部に放出させないよう消毒し、静かに密封をするなど、きめ細かなの配慮のもとで処分します。

 

(4)「エタノール」「次亜塩素酸ナトリウム」を使用

使用する薬剤は、濃度70~80%の消毒用アルコール(エタノール)、もしくは汚染度合いに応じて0.005%~0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを用います。フローリングのワックスが溶解する、金属が漂白作用によって変色するなど、薬剤によって室内素材にダメージを与える場合があり、どちらの薬剤を用いるかは現場で適宜判断して清拭を実施します。

 

(5)作業は2人1組で実施

安全に行うため作業は2人1組を基本に行います。防護服(PPE)は全身を覆うカバーオールタイプの感染症対応防護服を着用します。その上からゴーグル、N95マスク、インナーおよびアウター手袋、ビニールシューズカバーなどを装着し、ウイルスの侵入を確実に防ぎます。
防護服に使用される素材は、ポリプロピレン不織布に特殊な透湿性フィルムを張り合わせたもので、軽量かつ優れた耐水性能とウイルスバリア性能を発揮します。
ただ、発汗による湿気を外部に放出する透湿量には限界があるため、外気温が高い日などは防護服内部が高温多湿になることは避けられず、作業員の体調管理のため連続2時間を作業時間の限度とし、適宜適切な休憩を挟みながら、消毒作業を完徹します。

 

状況に合わせた合理的で有効な消毒作業に努めています

消毒作業を統括するペストコントロール事業部の山本秀雄部長は次のように述べます。
「計画立案から作業完了まですべて、事業所や施設の管理者や担当者と十分な打ち合わせを行い、納得と了解のもとに作業を実施します。風評被害の発生などの可能性がある場合、要望に応じて作業を夜間に行うなど、ご希望の時間帯に作業を集中させることも可能です。ニーズに応えた作業の実施に全力で努めております」
変異株の拡大が懸念される現在、最新情報の収集にも力を注いでいます。
「状況の変化を正確に読み取り、最新の知見をいち早く反映した作業の迅速な実施を心がけています。消毒作業に関するご質問やご相談に対して、どのようなことでも私たちは真摯に対応しております」

山本秀雄部長

 

2021年7月発行/日本衛生広報誌「WATER+ vol.11」より

●WATER+ vol.11 PDF版(4.0MB)

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