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日本衛生広報誌

WATER+ vol.1

2016年10月発行/日本衛生広報誌「WATER+ vol.1」
●北の名水紀行/大雪旭岳源水
●NICHIEIの技術と向き合い続けて


 

北の名水紀行/大雪旭岳源水

大雪山「旭岳」の大自然天然フィルター

2000m級の山々が連なる大雪山連峰の主峰旭岳は標高2291m。言うまでもなく北海道の最高峰として広く知られている。その山麓西側に全国でも珍しい上水道のない町域が広がっている。旭川市の中心部からわずか13㎞という近距離にありながら何故? という不思議の理由は、旭岳の自然がもたらす湧水の恵みにある。北海道の屋根に降り積もった雪や雨は地中深くへと染み込み、長い年月をかけてゆっくりとその町「上川郡東川町」へとたどり着く。水は長い旅の間に粘土堆積層と呼ばれる天然のフィルターでゆっくりとろ過され、地中のミネラルを豊富に含んだ名水となって地表に湧き出てくる。pH7.4の弱アルカリ性でカルシウムとマグネシウムの濃度バランスは理想的なミネラル比率とされる2対1。軟水の多い日本の水環境にあって、珍しい中硬水に分類されている。湧出量は1分間に約4600ℓ、1日では約6500t以上にもなり、この町に暮らす約8000人の暮らしをうるおして、まだたっぷりと余りある。
大雪旭岳源水と呼ばれるこの恵みは、2008年環境省により「平成の名水百選」に選定されている。名水と聞くと「そのまま飲めるおいしい水」を連想しがちだが、名水百選における「名水」とは、「保全状況が良好」で「地域住民等による保全活動がある」と定義されている。言ってみれば、人と自然の共生が育てた大切にすべき水環境といったところだろうか。日本最大の自然公園である「大雪山国立公園」の玄関口としても知られる東川町。その美しい田園風景は北海道で初めて景観行政団体に指定され「大自然と共生する町」として近年評価が高まっている。過疎化の続く道内では珍しく道内外からの移住者、観光客が増加しているのだとか。
市販されているミネラルウォーターはミネラルの調整やばっ気などの加工が行われているが、東川町で町民が飲んでいるのは、地下水を家庭用ホームポンプで引水しただけの文字通り「天然の恵み」。国際的にも高度のレベルを誇る日本の基準をクリアしたその水質は平成の名水にふさわしい清浄さに満ちている。町内にある大雪旭岳源水公園では、岩肌からこんこんと湧き出す様子を目にすることが出来る。

大雪旭岳源水公園にある源水岩(左)と取水場となっている源泉(右)では、だれでも自由に取水できることから、名水を求める大勢の人々で平日・日祭日を問わず賑わっている。

豊かな水と大地の恵みを育む旭岳

旭岳を中心とする表大雪山系はアイヌ語で「ヌタプカウシュペ」。その主峰である旭岳はアイヌの人々の崇拝の対象として「ヌタプカムイシリ」(川の湾曲部内の・神の・山)と称されていた。先人が愛し敬った山は、人や自然に恩恵をもたらす豊かな水の山でもある。日本で最も美しい沢と呼ばれるクヮウンナイ川、天人峡温泉から忠別ダムを経て上川盆地に入り石狩川へと合流する忠別川。忠別川の支流であるアイシポップ沢と双見沢にかかる羽衣の滝は、落差270m、標高1000m。7段の滝の途中で2つの沢が合流する美しい景観を楽しむことが出来る。
大雪旭岳源水のさらに深くへと染みこんだ水は、天人峡温泉、旭岳温泉など癒やしの名泉としての恩恵をもたらしてくれる。山の植生は山麓部の落葉樹林から針広混交林、ダケカンバ林、ハイマツ林、高山植生へと変化し、ヒグマ、キタキツネ、タヌキ、エゾイタチ、クロテン、エゾオコジョ、エゾユキウサギ、エゾナキウサギ、エゾシマリス、エゾモモンガ、エゾリス、エゾシカなど道内に生息するほとんどの種が豊かな水と大地の恵みの中で、太古から変わらぬ営みを続けている。

 

旭岳噴火時の噴火口であった鏡池と旭岳の山容

海川盆地に広がる豊かな田園風景

連なりおちる7段の滝が美しい様相を見せる羽衣の滝

 

 

 

 

 

 

 

 


安心して暮らせる世の中のために私たちができること

Safety & Amenity

ニチエイの創業は昭和56年。「Safety & Amenity」の精神を胸に、ビルメンテナンス事業をスタートさせました。以来30余年にわたって、貯水槽の清掃や衛生害虫の駆除、空気環境測定の専門業者として、人々の安心・安全・快適性の追求に取り組んできました。
時代はまさにバブル。大規模ビルが次々に建設されていくと、給水設備へのより厳格な衛生管理が必要となってきました。実際にねずみや昆虫などの異物混入の事例も報告され、飲料水にとっては危機ともいえる状況に陥ったのです。
「水」は生命の源。
赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人の健康を守りたい。この願いから、昭和62年、『環境分析センター』は誕生。今日に至るまで、水を安全に管理するためのあらゆる努力を続けてきました。
平成14年には「ISO9001」認証機関に。続いて翌年には「水道法第20条」指定検査機関の認証を取得。上水道や専用水道の水質検査が受託可能となり、市町村水道、大規模マンション、ホテル、病院などにまで事業の幅を広げることができました。
さらに平成26年、(社)日本水道協会が認定する、水道に特化した規格「水道GLP」を取得しました。これは北海道の民間企業としては第一号という異例のスピードです。分析結果の信頼性はもちろん、組織としての管理体制についても正式に保証を受けたことで、より高いレベルのサービスがご提供できることとなりました。
ニチエイの強み。その一つ目は「果敢な設備投資」です。環境分析センターでは、常に最新の分析機器が稼働しています。ビルメンテナンスとの兼業が、一般的な分析機関に比べて、チャレンジングな投資を可能にしているのです。
二つ目は「人材」。職員の多くが国内外の資格を有するスペシャリストです。各機関が実施する精度管理調査においても、毎回高いスコアで実績を残しています。また、役職を超えた信頼関係によってヒューマンエラーを徹底的に排除する、マネジメント力も私たちの自慢の一つです。
これからも、業界の中で先陣を切って歩み続ける「フロンティア精神」を忘れず、皆様のご期待にお応えできるよう努力を重ねてまいります。

NICHIEIの技術と向き合い続けて

技術的安全と社会的安心の追求

ニチエイが昭和62年に開設した『環境分析センター』。ここでは環境保全に必要となるさまざまな検査・分析を行って、高い実績を上げてきました。フィールドは広く、「水」の分野では、飲料水、工場などの排水、河川・湖沼などの環境水、温泉水まで多岐に受託。さらに、ボイラーのばい煙、空気中のホルムアルデヒド・揮発性物質などの「大気」、有害金属測定など「土壌」の分析も実施しており、あらゆるお客様へのご対応が可能です。
なかでも、水道水・井戸水といった飲料水については、格段の安全性確保が必要です。不幸なことに、飲料水の汚染事故は、毎年のように発生しています。とりわけクリプトスポリジウムなど原虫については、塩素の効力がおよばず、ひとたび発生すると集団感染を引き起こすことから、いち早い発見と適切な処置が求められます。
私たちは、道内の民間企業としては初めて「水道GLP」認定を受けました。これまで標準だった「ISO9001」ではカバーしきれない、水道水質検査に特化した品質基準をクリアしたことで、さらに多くのお客様にご満足いただけるようになりました。
これからも「優秀なスタッフの技術力」と「最新の分析機器」を駆使して、人々が生きていくうえで欠くことのできない大切な「水」の安全を守り、地球環境の保全に貢献していくために歩き続けます。

公的機関が認める高い品質(外部精度管理調査)

厚生労働省、環境省、各自治体が実施する外部精度管理調査に積極的に参加し、毎回高い成績を修めています。「水道法20条」に定められる精度管理検査では、高いスコアで「第一群」の評価を獲得しています※。このほか年4回の「水道技能試験」や、自治体主催の各調査においても優秀な成績をおさめ、当センターの品質は高く保証されています。

※平成27年度水道水質検査の精度管理に関する調査結果/厚生労働省

センター独自の取り組み(内部精度管理調査)

分析機器のスペックを維持するため、定期的に内部精度管理調査を行っています。これは濃度の決まった同一サンプルを機械ごとに分析し、分析値が適正かどうかをチェックするもの。同時に、担当スタッフの技術が確認できるため、スキル研鑽のための重要な機会にもなっています。

プロフェッショナル集団であり続けるために

スタッフたちの多くは、環境計量士、水質関係第一種公害防止管理者、建築物環境衛生管理技術者など、国内外の技能資格を保有するスペシャリストです。メイン業務は検査・分析ですが、オフィスを離れ、お客様の元でサンプル採取する、そのプロセスをとても大切にしています。自らの目で現場を確かめ、ご要望に耳を傾けて、きめ細やかなサービスを提供しています。
また、スタッフ全員が法令を熟知。実情に則したサービスを、効率よく提供するよう心がけています。

最新分析機器をラインナップ

当センターの最大の強みは、「果敢な設備投資」です。分析機器は、誘導結合プラズマ質量分析計や液体クロマトグラフ|タンデム型質量分析計など、常に最新のものを取り揃えています。たとえ法令の改正などで、求められる検査項目がガラリと変わっても、しっかり順応し続ける。公益的使命を果たすため、私たちは盤石の体制で取り組んでいます。また、日々の丁寧なメンテナンスや内部精度調査からのフィードバックにより、すべての機器はベストコンディションを維持。進化し続けるこの姿勢こそ、高精度の検査を可能にする源流なのです。

ICP/MS(誘導結合プラズマ質量分析計)
プラズマ(ICP)によってイオン化された原子を、質量分析計(MS)に導入し、元素の検出を行う。飲料水中の金属をppbレベルで高感度に検出。ほぼすべての重金属を一斉に測定できるため、水質分析では盛んに用いられる。
光学顕微鏡
強力な照明、高度な光学性能を備えた先進の顕微鏡。クリプト原虫など、染色試料の分析はもちろん、無染色の試料も細部まで観察することが可能。
LC/MS/MS(液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計)
成分分離部(LC)で成分ごとに分離し、最初の質量分析部(MS)で選択した成分をさらに解離、次の質量分析部で検出を行う。飲料水においては農薬分析に採用されることが多い。

 

2016年10月発行/日本衛生広報誌「WATER+ vol.1」より

●WATER+ vol.1 PDF版(2.0MB)

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